企業版ふるさと納税とは?
企業版ふるさと納税とは、寄付金の損金算入および税額控除のことを指します。
個人のふるさと納税は対象が所得税ですが、企業版の場合は法人税が対象となり、所得税と法人税では仕組みが異なるため、同じ「ふるさと納税」というものの、税制度は大きく違ってきます。
そして、企業版ふるさと納税は、寄付者が法人に限定されるため、個人と比べ対象者が少数となります。
企業版ふるさと納税の寄付までの流れ
企業版ふるさと納税の場合、個人のふるさと納税と比べ、特に寄付を受ける自治体側の手間が発生します。
まず、地方自治体が企業版ふるさと納税の対象となるためには、地方創生の観点から効果が高いと考えられる「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」を企画立案する必要があります。
次に、地方自治体はこれを地域再生計画として内閣府に申請し、認定を受けなければいけません。
そして、認定を受けて初めて、地方自治体は事業を実施し、事業費を確定させることができます。
法人は、このような対象自治体へ寄付を行い、法人税の確定申告の際に地方創生応援税制の適用がある旨を申告し、税制優遇を受けることになります。
しかし、事業費を先に確定しなければいけない都合上、自治体は大口の寄付を予定する法人とあらかじめ事業内容について打ち合わせる必要があります。
自治体側の制限
以下の自治体は、企業版ふるさと納税の対象外となります。
- 地方交付税の不交付団体である都道府県
- 地方交付税の不交付団体であり、その全域が地方拠点税制の支援対象外とされている市町村
法人の制限
- 本社が所在する地方自治体への寄付は対象外
- 1 回あたりの寄付額は 10 万円以上でないといけない
企業版ふるさと納税の寄付上限額
企業版ふるさと納税は、法人税の寄付金制度であるため、個人のふるさと納税とは上限額や税の効果は異なってきます。
企業版ふるさと納税の場合、法人の当該寄付額は特定寄付金となり、他の寄付金と違い全額が損金に算入されます。
つまり、寄付額 30 % につき、法人税を減額する効果があることになります。
これに加え、法人住民税・法人事業税・法人税の合計で寄付額の 30 % の税額控除があります。
法人住民税では、寄付額の 20 % を税額控除としますが、法人住民税額の 20 % が上限になります。
※そして、控除額が 20 % に達しない場合、寄付額の 20 % に相当する額から、法人住民税の控除額を差し引いた額を法人住民税から控除します。
法人事業税では、寄付額の 10 % を税額控除となりますが、法人事業税額の 20 % が上限となります。
以上から、寄付金額の全額損算入により寄付金額の約 30 % が法人税の軽減効果となり、これとは別に寄付金額の 30 % が法人税などの税額控除という形で法人税の軽減となります。
結果的には寄付額の約 60 % の法人税の軽減効果があり、法人の負担は寄付額の約 40 % となります。
企業版ふるさと納税まとめ
法人税における企業版ふるさと納税は、本社のある自治体への寄付が対象外となることや、寄付対象となる自治体が事業認定される必要があるため、個人のふるさと納税に比べ、納税者の寄付の意思が届きにくい特徴があります。
しかし、寄付対象となる自治体は少ないものの、希望する寄付先が事業認定自治体であれば、寄付の意思は直接その自治体に反映されます。
そして、企業版ふるさと納税は地方自治体が事前に地方創生に関わる事業案を作成しているため、事業に協賛する企業が寄付することになります。
また、個人のふるさと納税と同様に、企業版ふるさと納税も寄付額の上限は課税所得の多い法人ほど大きくなるため、支払い税額の多い法人ほど有利な制度といえます。
しかし、寄付額のほぼ全額が還付される個人ふるさと納税と違い、寄付額の 4 割は法人負担となるため、負担額が大きいことから寄付額に歯止めが効くという効果があると考えられています。
企業版ふるさと納税にも返礼品があるものの、法人と地方公共団体では癒着の問題が起きやすいことから、
- 寄付額の一部を補助金として渡すこと
- 入札などで便宜を図ること
- 有利な利率で融資すること
など経済的利益を寄付の代償とすることは禁止されています。
また、返礼品は贈与の対象となり、法人に対する贈与は法人の益金となるため、課税対象となります。
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