ここ数年で利用者が急増した「ふるさと納税」。
ふるさと納税を活用して、地方の特産品をお得にゲットしている人も当たり前になってきましたね。
とはいえ「ふるさと納税 = お得な制度」とだけ理解している人も多いのではないでしょうか。
そこで、今回は意外と知らないふるさと納税の歴史を解説していきます。
「ふるさと納税がどんな成り立ち・経緯で成長してきたのか」
これを知っておくことで、ふるさと納税の理解がグッと深まりますよ ( ・ㅂ・)و ̑̑
ふるさと納税の成り立ち
国と地方の個人所得課税に税額控除方式での「ふるさと寄付金控除」の創設を提案したい。納税者が故郷の自治体などへ寄付を行った場合に、これに見合った税額を所得税と個人住民税から控除するのである。
これは、課税権の帰属を納税者が決める新たな課税方式ではなく、形式の上では控除方式を所得控除から税額控除に改めるだけの極めてシンプルな改革だが、これだけで、納税者の意思で、国から故郷へ、大都市圏から地方へとソフトな形で税の移転が格段に進む。
〔提案の趣旨〕
○ 現行制度においては、子どもや高齢者の世代が地方の豊かな環境の中で多くの行政サービスを受けて生活している一方で、税は、働き盛りの世代が数多く移り住んだ大都市圏に支払われるというギャップが生まれている。
○ 現在の税制は、このような「人の循環システム」が考慮されておらず、これを放置したままでは、地方が疲弊するばかりか、わが国社会の発展そのものが大きく阻害される恐れがある。〔提案の概要〕
○ 生涯を通じた行政サービスと税負担をバランスさせる新しい税制(ライフサイクル・バランス税制)を取り入れていくことが必要である。
○ そのひとつとして、所得税・住民税に税額控除方式で「故郷ふるさと寄付金控除」を導入し、納税者が故郷ふるさとの自治体などへ寄付を行った場合に、これと同額の税を控除する。
「ふるさと納税」論議は、平成19年5月の総務大臣の問題提起から始まった。
多くの国民が、地方のふるさとで生まれ、教育を受け、育ち、進学や就職を機に都会に出て、そこで納税をする。
その結果、都会の地方団体は税収を得るが、彼らを育んだ「ふるさと」の地方団体には税収はない。
そこで、今は都会に住んでいても、自分を育んでくれた「ふるさと」に、自分の意志で、いくらかでも納税できる制度があっても良いのではないか、という問題提起である。
ふるさと納税の始まりは、今から 10 年以上前、西川一誠氏 (福井県知事) の「故郷寄附金控除導入の提案 (2006 年 10 月)」がきっかけと言われています。
この提案を受けて、菅義偉総務大臣 (当時)が、都市部の税収を地方に還元する制度の創設に向けて動き出しました。
地方で生まれた人は、その自治体から医療や教育などの住民サービスを受けて育ちます。
しかし、彼らの多くは、大学進学や就職を機に、都会に出て行き、そして、新しく住み始める自治体へ納税することになります。
その結果、都会にばかり税収が入り、生まれ育った「ふるさと」には税収が集まらないという矛盾が発生します。
誰でも生まれ育ったふるさとへ恩返ししたいという気持ちがあるのではないでしょうか。
そこで検討されたのがふるさと納税制度というわけです。
ふるさと納税の始まり
6 月1 日に、総務省が「ふるさと納税研究会」(座長:島田晴雄・千葉商科大学学長。以下「研究会」)を立ち上げて議論を開始し、研究会は、10 月5 日に『ふるさと納税研究会報告書』(以下「研究会報告書」)をまとめた。
研究会報告書の内容は、ほぼそのまま地方税法等改正案に盛り込まれて翌年の通常国会に提出され、平成20 年4 月30 日に成立した。
ふるさと納税に係る部分は、平成21 年4 月1 日施行ではあるが、平成20 年1 月1 日以降に支出された寄附金について適用される。
このため同法案の成立を受けて、各自治体が取組みを開始しており、平成20 年度が実質的な制度のスタートの年と考えることができる。
2008 年 4 月 30 日の「地方税法改正案」に、ふるさと納税に係わる記述が盛り込まれました。
地方税法の改正は 2009 年ですが、2008 年の収入からが寄附金控除の対象となるため、ふるさと納税の開始は事実上 2008 年とされています。
ふるさと納税の市場規模 (過去 10 年の推移)
開始時の平成 21 年度は 72 億円だったふるさと納税額が、平成 30 年度では 3481 億円の規模にまで拡大しています。
特に、平成 27 年度から 28 年度の伸びの大きさが目立ちますが、これは平成 27 年度の 2 つの制度改正が影響しています。
2 つの制度改革とは?
- ワンストップ特例制度の導入
5 ヶ所以内の自治体へのふるさと納税であれば、確定申告せずとも税金の控除・還付を受けられる仕組みの導入 - ふるさと納税の上限額引き上げ
ふるさと納税の税金控除額の上限金額が住民税の 1 割から 2 割に引き上げられた
ふるさと納税を行っている人は平成 30 年で 約 300 万人。
それに対して、個人住民税を支払っている人口は約 5,500 万人であるため、ふるさと納税の利用者割合はわずか 5.4 % です。
現状ではふるさと納税を利用している人はまだ一握りであり、ふるさと納税市場はこれからも拡大傾向にあると言えるでしょう。
ふるさと納税制度の変遷とこれから
ふるさと納税制度が開始してから、10年以上が経過しました。
これまでの変遷をみていきましょう。
2009年:制度発足当初は低調
制度発足当初は、知名度が低く、あまり活用されていませんでした。
2009 年の寄付金総額は、わずか 72.6 億円でした。
またこの頃は「返礼品」の概念はなく、いくつかの自治体があくまで寄付のお礼として粗品を送付する程度でした。
2012年:「東日本大震災」の影響を受けた寄付金額の急増
出身地や応援したい自治体に寄付する「ふるさと納税」。
東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島の3県では、震災を機に寄付金額が急増した。
東日本大震災の影響で、被災地の応援を目的とし、寄付者が急増します。
2012年の寄付金額は 649 億円にまで達しました。
また震災から数年経った現在でも、復興支援用途のふるさと納税を継続する方がいるようです。
2014年:長崎県 平戸市が寄付金額 10 億円突破
多くの地方自治体では、寄付者が先に自分がほしい返礼品を選び、それを受け取るために必要な寄付金を支払う仕組みを採っているが、平戸市のポイント制度は、寄付した金額に応じてポイントが付与され、寄付者がそのポイントを使って、カタログに掲載されている特典の中から好きなものを選んで注文する仕組みだ。
寄付者は自分の都合に合わせ、好きなときに好きな額を寄付し、ポイントを貯めて、後からじっくり返礼品を選ぶことができる。ポイントは寄付するたびに付与され、有効期限はない。
【payment navi】長崎県平戸市、独自のポイント制度や「Yahoo!公金支払い」の導入などによって日本一のふるさと納税額を達成
平戸市(長崎)が全国で初めて、自治体単独での寄付金額10億円を突破しました。
寄付額に応じた「ポイント制」を導入し、リピーターを獲得していることに注目が集まりました。
2015年:税制改正により利用者が増大
・制度改正 1: ふるさと納税枠を約 2 倍に拡充
原則として自己負担額の2,000円を除いた全額が控除される限度額である「ふるさと納税枠」が、平成27年1月1日以降、約2倍に拡充されました。
・制度改正2: 手続きの簡素化(「ふるさと納税ワンストップ特例制度」の創設)
確定申告の不要な給与所得者等がふるさと納税を行う場合、確定申告を行わなくてもふるさと納税の寄附金控除を受けられる仕組み「ふるさと納税ワンストップ特例制度」が創設されました。
特例の申請にはふるさと納税先の自治体数が5団体以内で、ふるさと納税を行う際に各ふるさと納税先の自治体に特例の適用に関する申請書を提出する必要があります。
税制改正で、ふるさと納税制度はより便利になりました。
- 「ふるさと納税枠」が2倍に拡充
従来の 2 倍価値の返礼品がもらえるようになった
- 「ワンストップ特例制度」の導入
給与所得者 (サラリーマン) でも利用しやすい制度になった
ワンストップ特例制度とは?
ふるさと納税をした後に、「確定申告をしなくても寄附金控除が受けられる」便利な仕組みです。
「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」に必要事項を記入して、寄附した自治体に送るだけなので、手続きが簡単になりました。
- 給与収入が 2,000 万円以内の人
- ふるさと納税先が 5 自治体以内の人
が対象となります。
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ワンストップ特例制度の仕組みまとめ | 確定申告不要のふるさと納税
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この制度改正をきっかけに、ふるさと納税は急激に広まり、2015年以降の寄付金額は大幅に上昇することになります。
寄付金額の推移
2015 年 | 341 億円 |
2016 年 | 1,471 億円 |
2017 年 | 2,540 億円 |
2019年以降:返礼品規制強化の動き
地方税法の改正案はふるさと納税の返礼品をめぐる自治体間の競争が過熱していることを受けて、返礼品を寄付額の3割以下の地場産品とするなどの基準を明記し、ルールを守らない自治体をことし6月以降、制度の対象から外すことなどが盛り込まれています。
2019 年 地方税法の改正案の中で返礼品に関する規制が盛り込まれています。
改正案のポイント
- 返礼品の返礼割合を3割以下とすること
- 返礼品を地場産品とすること
- 自治体が上記ルールを守らない場合、総務大臣はふるさと納税対象自治体から外すことができる
→ 対象外自治体にふるさと納税しても寄附金控除が受けれなくなる
「ふるさと納税の行き過ぎた返礼品競争を健全化すべき」という意図の改正案ですが、その一方で、「ふるさと納税は自治体が工夫することで発展するものであり、国が上から目線でルールを変えることは控えるべきだ (足立氏 (日本維新の会)) 」という意見もあります。
この改正案が可決された場合、2019 年3 月末に成立し、6 月から新制度が適用されることになります。
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